【PRATER対談】強い美容室をつくる組織コンサルティング

個人と組織の目標設定

竹内
ここからは美容業界に関する話にも触れていきたいと思います。高野さんは、美容室に対しても組織コンサルティングをされてきました。そのなかで、他業種と比較した美容室の組織としての難しさ・特徴について、ご意見をお聞かせください。
高野
美容室というのは、飲食店と比べるとタレントマネジメントみたいなものが非常に難しいと感じます。芸能事務所に近い組織だと思います。芸能人だと売れてくると独立されちゃう、売れていないと全然収益にならないんですね。売れていない人を売れるようにしなければならないという問題と、売れたら独立されるということを両立させないといけないのが、非常に難しい点だなと思います。
これはロジックとして何が難しいかと言うと、実は目標のコントロールが非常に難しくて。チームにしようと思うと目標をひとつにしていく必要がありますが、自分の目標と組織の目標を一致させることが組織づくりでは非常に重要になってきます。組織目標は売上を上げようとか、顧客の増やし方や人の采配などが掲げられますが、個人目標は自分の売上を上げたい、自分の損得の話があって、これが一致すると自分はここにいた方が良い人生をおくれると感じる。組織目標と個人目標が一致すれば離職も少ないし売上も上がるんですけども、この一致が極めて難しいのが特徴だと思うんですよね。だから、芸能事務所もそうですが、美容室の経営者がやるべきこととは組織目標を個人目標と照らし合わせても、この人はどんな人生をおくるのかを会社側も明確にしてあげないといけない。例えば、独立するなら本当に成功できるのか、そのときにはコストも掛かるし経理・採用・集客も自分でやらなければならない、自分でやらなければならないことが沢山あって実際やってみたら凄く大変だ、面倒くさい、実は向いていないってことがあるにも関わらず飛び出してしまう。本当にそれが良かったことなのか、むしろ残っていた方が自分のやりたいことができるっていう風に思わせることができたら、売れる人を自社へ置いておけることになるじゃないですか。そんな風に、経営者側が組織目標と個人目標を一致させるような評価の仕組みや育成制度、その人がやらなければならないことの代行などを、解りやすくキャリアにのせていく。そうすると、自分の人生の選択肢としてどれを選べばよいのか、外にでたらどんなメリットデメリットがあって、中に残ったらどんなメリットデメリットがあるのかが、曖昧という会社が多いように思います。
これを明確に示していくと出ていく人も少なくなる。そうすると採用もきっと上手くなると思うんですよ。こういうことができている、美容師が活き活きと確信を持って生きている、そんな美容師が沢山いるところは採用面でも魅力的にみえますから、そういう採用・教育トレーニングをきちんとやって残っている人は活き活きしているような組織づくりが求められているんじゃないかなと思いますね。
竹内
非常に深い話だと思いますし、私も共感します。本物の組織は、スタッフファーストとして独立なのか組織に属するのか、どちらがより幸せな美容師ライフをおくれるのかという選択肢があるなかで、組織で運営する以上は組織に属する方が魅力的だという部分をスタッフへ感じさせ続けなければならないですし、それが異なる場合は独立を選択できる道がある。組織としてスタッフ個々の魅力や能力を活かしきれる場を、組織内にもきっちりとつくることが必要。深い組織論、組織づくりは評価制度もそうですし、先々の未来を見据えた選択肢としてどちらがベストなのか、短期だったらどうなのか。そういったことをスタッフへすべて伝えた上でどちらに魅力を感じ選ぶのか、その提案・提示をしていくことこそ強い組織づくりの一歩ですし、スタッフへの本物の提案になるのかなと感じました。
高野
まさにおっしゃる通りで、スタッフと組織の目標を一致させる観点をお伝えしましたが、オーナーと組織の目標をどう一致させるかも一方で大事だと思うんですね。オーナーが経営する上でスタッフファーストみたいなことを考えるのって、オーナーにとってどうなの?って点もスッキリさせる必要があるかなと思います。オーナーファーストでもあり、組織ファーストでもあり、スタッフファーストでもあるという状態をどうイメージさせるか、どうビジョンづくりさせるかは非常に大事なことかなと思っています。逆にスタッフファーストにした方が、オーナーにとっても収益性が上がって理想の組織になるようなことをしないと、オーナーが心のどこかで自分を犠牲にして色んなところで我慢して、なんでスタッフのためにここまでしないといけないんだ!という気持ちで作っても、きっとどこかで化けの皮が剝がれてしまって続かないと思います。だから、本当にスタッフファーストがオーナーの人生にとっても、オーナーの理想の組織づくりにおいても、オーナーの収益性においても理想的な状態なんだっていうところまでビジョンイメージが設計できるかどうかは非常に大事なことです。
竹内
コロナ禍において、beforeコロナ・afterコロナでも経営者側の意識やスタッフ側の意識も大きく変化している経済社会の現状ですが、美容業界に限らずあらゆる業界でコロナ禍の前後で何か感じることはございますか?
高野
そうですね、コロナの前と後で大きく変わる業種と、あんまり変わらない業種があるなと本当に実感しています。外食業界なんかは、めちゃくちゃ変わっているんですよね。それはもう業態の在り方自体から変わるというか、皆さんがイメージしやすいところで言うと、テイクアウトや通販、そういった新しい商品の買い方が変わっているので、待ちの姿勢だと生き残れなくなっている状況があります。それは解りやすい話じゃないですか。テレビ番組とかも凄く変わっていますよね。昔はリモートなんてなく、皆がスタジオへ来て撮影していたのが、今はリモート型になったのでレポーターが現地に行かない。現地の人にリモート収録へ出てもらって放映することができるようになった。
そんな変化が生じているなか、コロナは大きな環境の変化なので、環境の変化へ適応する姿勢をみせるかみせないかが大きく言うと違う点かなと思いますね。組織づくりにおいても、環境の変化へ適応できる組織にしようとするのか、いやいや今のままを何とか守っていこうとするのかにも大きく分れる印象がありますね。

チームの健康診断、チームドックとは

竹内
外食業界において非常に大きなコロナ前後の変化が生じている、ということを改めて感じました。また、美容室はライフラインに近いような業界でもあるので、外食業界ほどの店舗運営における大きな変化はないかなと感じる一方で、スタッフと経営者の関係性などでは大きなうねりが起こっているのかなと思います。高野さんがあらゆる業界へ対応した組織論・組織づくりをしてきて、組織を年毎に変化・強化させていかなければならない上で、実はチームドック(組織健康度診断)というオーナーと従業員のロイヤリティ制、組織診断として現状の通信簿のような課題を洗い出す診断システムがございます。美容業界においても、コロナ禍で経営者と従業員間の温度差・ギャップに対して目をそらさず互いに価値を共有できるような、本気の診断が双方へ必要なのかなと感じます。このチームドックについて、高野さんから詳しく教えていただきたいと思います。
高野
チームドックは、全スタッフへの50問ほどのアンケートを通して診断できるツールです。今、うちの会社どうですか?というような、いわゆる満足度調査ではなくて、チームの健康診断のようなものです。ひとりひとりがどんな目標を持っているのか、スタッフとの関わりはどうなっているのか、というようなことを見える化するツール。まさにafterコロナこそ、このチームドックは必要だなと思います。というのも、先ほど美容室は芸能事務所と近いと例えましたが、美容室と芸能事務所のようなタレントマネジメントが必要な組織では、タレントの在り方みたいなものが今までは美容室が守ってくれる、事務所が守ってくれるという観点から、個人ももっとSNS等から表へでて色んな活躍の仕方がOPENになったような気がします。個人と会社の関わりのようなことが、もっともっと見える化しないといけない。今、自分がやりたいことはこの場所にあるのかどうか。そして、ないとしたら何故なのかということを見える化・数値化して、それを材料にして組織と個人が話し合いをする。
何故このようなチームの現状なのか、と話し合いをするようなツールになっているので、あなたの組織は何点ですよ、と点数を付けることがゴールではなく、自分たちのチーム状況を明確にしてディスカッションをしてもらって、より良いチームになるためのツールになっています。それがアンケートに答えてもらうだけでアウトプットがでてきて、それを基にディスカッションしてもらうことが非常に大事だと思っています。
竹内
高野さんに冒頭からお話していただきました通り、東洋経済オンラインへ掲載されている素晴らしい記事があり、またYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』でも様々な領域の話を分かりやすく発信していらっしゃいます。組織論を追究してきたコンサルタントは、私の知る限り高野さんしかいらっしゃいません。株式会社チームDにおけるチームドックを、私の株式会社DISCOVERYと共同で運営も展開していきたいと思いますので、ご興味のある方はPRATER へDMをお送りください。高野さん、本日は本当にありがとうございました。

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