【PRATER対談】VRにおける美容師の教育・iiiが目指す未来【前編】

会社設立と業界の課題を解決するVR

竹内
寺村さんは現在30歳で、ここまで非常に濃厚な人生を送ってきているかと思います。そんななかで、2020年に株式会社iiiというご自身の会社も設立、様々な展開をされています。株式会社iiiの社名には、どんな想いが込められているのでしょうか?
寺村
社名には色んな理由があるんですが、3の倍数が好きっていうことと、小文字のiを並べて3と読むようにしているのですが、idea・inspirationとかiから始まる言葉が僕は凄く好きなんですよ。
なぜ大文字のIではなく、小文字のiにしたかというと、美容師がお客様の髪を引き出すときに、お客様の頭と引き出されたパネルが小文字iに見えるなということ。なので、小文字のiが結構好きだったので、それを組み合わせて考えた会社名ですね。
竹内
凄く美容師っぽい、リアルなサロンワークや美容師として生きてきているなかでのインスピレーションから生まれたイマジネーション性の高い会社名ですね。
次にVRを始めたきっかけをお聞かせください。
寺村
僕がVRを事業として始めたのは4年前です。そのときは個人事業主として美容師をやる傍ら、VRのコンテンツを制作できる会社さんと共同で作っていきました。経緯としては、僕自身、有名店で技術を習得するために朝から晩までお店にいて必死にやってきたのですが、美容師を10年続けていくと頑張りたくても頑張れなくて辞めていく方って、いっぱいいるんだなと。じゃあ、辞めちゃう人が美容師としてダメなのかというと、そんなことはなく、本当に素敵な人たちなんだけど時間や場所の拘束など、色んな理由で美容師を続けられない人がいるなかで、ふと考えたんですよね。僕の同級生で、美容師は辞めちゃったんだけど写真撮ることが好きで、その後、カメラマンのアシスタントになって今は『そうだ 京都、行こう。』の写真を撮っている子や、不動産業へ転職して凄い営業マンになっている子がいます。手荒れや、体力なく夜遅くまで働けない等、そういう原因で美容師を離れちゃって、美容師を嫌いになったわけではなく、こんな能力の高い人たちがもし美容師を続けていられたら、どんな美容師になっていただろうなって想像したら、凄くワクワクしたんですよね。
この業界はどうしても離職率の高い業界なので、たぶん同じような問題を抱えている人たちって個人だけでなくオーナーさんたちにも多いのではないかなって思います。
僕がVRをゲームで体験したときに、凄いなって思ったんですよね。自分が経験したような経験ができる、仮想空間上でやったことを脳は自分がやったかのように記憶に残る。そこからVRについて色々と調べるようになりました。4年前だとVR関連の日本語訳されている本が全然なくて、知っている方たちから直接聞いて試行錯誤しながらやってきました。やり始めたきっかけは、業界の課題を解決したい想いからです。
竹内
寺村さんが今、VRのシステム的なものを開発されて、具体的にそれを導入している美容学校などの話を聞かせてください。
寺村
はい、今、ありがたいことに原宿にあるベルエポック美容専門学校さんで、課外授業として取り入れていただいています。なかなか美容学校では学べない、美容師になってから即戦力として必要とされる技術、尚且つせっかくVRで勉強するので、サロンで簡単に習えてしまうものではなく、サロン側でもなかなか教えられない・教え慣れていない技術を、学生の貴重な2年間を使って習得してもらいたいなと思い、今は3つにコンテンツを絞って教えています。
ひとつめが、縮毛矯正。ふたつめが、バレイヤージュというカラーの中でもトレンド性が高く、尚且つそのスタイルをつくることですべてのカラーテクニック、カラーの基礎的なことを学べる技術。最後に、メンズのスタイリングです。アイロンと様々なスタイリング剤を使って、色んなスタイルをつくっていく。ひとつの髪型で、アイロンの入れ方、ワックスや使うスタイリング剤を変えるだけでも、全然違った髪型がつくれることをVRで勉強してもらっています。
竹内
縮毛矯正、バレイヤージュ、そしてメンズスタイリング。この3つを、美容学生に対してVRを活用して指導していらっしゃるとのことですが、VRを使うことでどのような利点があるのでしょうか?
寺村
基本的には、一流の技術者の一人称視点、その人が実際に作業している視点でVRを鑑賞できるように撮影し、コンテンツを作っているのですが、面白いことに脳は勘違いを起こすんですよ。耳にもイヤホンを付けて聞くし、映像上では自分の手元のように観える。VRゴーグルをかけることで両手があくので、あいた両手を使って実際に観えている映像の、一流の技術者さんの手元を真似することで、脳は手を動かしているから観たものを自分がやっていると間違って記憶するんです。良い間違いなのですが、この勘違いを起こすことによって苦手意識をなくせる。
今までの技術って、先輩に見せてもらって、自分で実際にやってみる。やってみたときに全然できない、ってことで苦手意識を持ってしまって、できなくなってしまう。その自分の思い込みから抜け出せないことって結構あると思うのですが、VRで一発目から上手い人の映像を観せると、できる、と勘違いを起こすので、すぐにできるようになるんですよね。本当に驚くほど上達しています。
竹内
要はリアルで学ぶよりも、VRで疑似体験をしながら学ぶほうが教育の時短が図れるという認識でよろしいでしょうか?
寺村
はい、相当な時短になりますね。あと、教育する側のコスト。僕も美容師なので、後輩に教えてあげて「1週間あるから、練習しといてね!」と伝えて、1週間後にチェックしてみるとあまり成長していなかった、前回と同じところができていない、そんなことがよくあります。それを教える側が考えて、どうしたらできるようになるのかな、と考えてきたと思いますが、これはなぜ起きてしまうのか。それを考えてVRのコンテンツを作っているので、基本的には前回と同じところができていない、なんてことは起きていないです。前回よりも必ず前進してきてくれていて、尚且つ、今までは一生懸命練習する子しか上手くならなかったのですが、家にいて寝る前にVRを1回観る、それだけでも上達しちゃっているんですよ。だから本人たちのなかでは、努力したとかではなく、楽しんで覚えている感覚。やっぱり、できない自分を奮い立たせなければいけないじゃないですか。それを、できなくないので、最初から楽しいへ持っていけているところが良いなと。
そういうことを言うと、昔の経営者さんとかは「努力とか根性、大事だよ!」と仰るんですけど、もちろん大事ですが、努力や根性が必要な場所を別の場所に持っていった方が良いんじゃないかな、と僕は思います。技術を習得すること自体が苦になってしまっている部分があるので、そこを僕は楽しんでもらって。美容師をやっているともっと大変なことはあって、例えば接客していてお客様からクレーム、なかなかお客様を集客できない、そういったところに努力や根性の矛先を向けてもらうべき。教育に関しては楽しんで、ゲームしながらポケモン151匹を気付けば覚えちゃっていた、みたいな。そっちでも良いのではないかな、と思っています。
竹内
VRを活用することによって、寺村さんは美容の教育に対してのイノベーションを起こしていくと謳っていらっしゃいます。そのなかで、コロナ禍においても教育する場所が非常に問われている。シャンプーをするにしても、カラーをするにしても、人が集うなかで教育しなければならない点が、コロナ禍においてはリスクを伴う。このVRを活用した教育は、場所を問わない。美容学校、美容室でなければできない、そこもソリューションしていける。予習・復習も場所を問わないことへ非常にメリットを感じるのですが、実際に講習を受けられた方々からもその点に対して賛同を得ているのでしょうか?
寺村
そうですね。おっしゃる通り、時間と空間を超越できるコンテンツだと僕は思っています。今まで技術を習得しようと思うと、教えてもらう方と時間と空間を共有する必要がありました。その時間、その場所にいないといけない。もちろん今はオンラインで動画等からも学べますが、僕も様々なオンラインコンテンツ、YouTubeや美容師の技術を学べるものを観ていますが、没入はできないんですよね。観ていても、集中力が切れてLINEを見てしまったり、横にいる友達と話をしながら観てしまったりしますが、VRは没入してしまうんですよね。僕自身、様々なコンテンツを購入してやってみるんですが、気付くとVRで4時間過ごしてしまうなんてこともあります。だから、危険すぎてVRのゲームをしないようにしているのですが、ゲームを始めると何時間も経ってしまっていて、そのくらい集中力が途切れないものなんですよね。
実際、美容学生の子たちにも「練習したら報告してね!」と伝えているので、練習したら報告があがってくるのですが、練習しないのにドンドン上手くなっていく子がいて「本当は隠れて練習したの?」って聞くと、「いや、練習はしてないんですけど・・・ウィッグとか持って帰れなかったので、家でVRだけ観ました。」って子がちゃんと上達していることに驚きを隠せないと言うか・・・。本当に技術だけでなく、美容室で習うクロス付けとかもVRに入れて「来週、クロス付けをやるから予習してきてね。」と伝えて予習してもらったんですけど、予習だけでクロス付けができるようになっているんですよね。だから教えなかったです、クロス付けに関しては。
竹内
色々な角度から、VRを活用した戦略の話を聞かせていただきました。VRは、どんな場所でもクオリティの高い、実体験に近いリアリティのある教育を受けることができる。その学びは、リアルな教育よりも更にリアルな体験ができる、リアルよりも上の体験がVRで実現できる。そのコンテンツが縮毛矯正・バレイヤージュ・メンズスタイリング。これを学んだ人たちが美容学校を卒業すると、より早く美容室の業務へ溶け込める。美容学校卒業後のアシスタント教育期間で、シャンプーテストやカラー塗布テスト等の業務、入社した段階での美容師としてのクオリティを高めることができる。そういった取り組みを寺村さんご自身がされている。それはサロンのなかで教育するのではなく、美容師の卵、美容学生の段階で即戦力となるよう、色んな美容学校へこのVR教育を導入しながら全国の美容学生の更なる育成を、株式会社iiiとして注力しVR教育事業を広く展開されています。こういったVRが美容学校だけでなく、美容室の現場でも美容メーカーやディーラーによってシステムが導入されることによって、美容師の負荷、教育にかかる時間やスタイリストデビューするまでの教育コストをドンドンと圧縮できて、なるべく早いスタイリストデビュー、そして美容師としてデビューが遅いことでの離職も改善し、美容師としての幸せ、美容師を続けられる未来像をVR活用で叶える展望を寺村さんは描いています。そのイメージで、このVRシステムが業界内に伝わり、拡がっていくと良いなと感じました。

PRATER更新情報、その他お知らせをいち早く!
編集部へのお問い合わせもこちらから。

友だち追加

最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE

LINE登録

PRATER更新情報、その他お知らせをいち早く!編集部へのお問い合わせはこちらから。