編集部より
こちらの記事は、1サロンさんの体験したドキュメントとなっておりますため、これが今の状況のすべてではありません。あらかじめご了承ください。
はじめまして、Y’s hair GROUP(ワイズヘアグループ)を運営するZIMA ENTERPRISE 代表取締役 CEOの和田島靖史です。
昨日、国より緊急事態宣言が出されました。テレビをつけてもネットをみても「新型コロナウイルス」一色です。この時期、美容師もサロンオーナーも心配がつきないのではないでしょうか。
そんな渦中、5店舗を経営する私の店舗でリアルに起こった事例を、実体験として皆さまにお伝えしていこうと思います。
まさか自分のお店で……
2020年4月1日、早朝。
県外から、新型コロナウイルスの罹患者がうちのサロンにご来店していたかも!? との報告が店舗スタッフからありました。
え……。今日はエイプリルフール。悪い冗談はやめてくれ! と思ったのが正直なところ。しかし、これは現実。その瞬間から、私たちの大切にしてきたサロンが【日本一危険なサロン】と、世間に認識されたのです。
即日自主的閉店
4月2日。お客様とスタッフの安全を守ることを最優先にし、2週間の営業自粛を決断しました。
既にご予約をいただいているお客様に対するお断りのお電話を数百件、ホームページ上での告知、個人情報の保護、他の店舗には更なる予防対策の徹底を指示しました。
「そのお客様はいつ、どこからご来店されたのか」「PCR検査はいつするのか、それはいつ結果が出るのか」
そのお客様と同じ空間にいた他のお客様からの問い合わせも多数。当然ですよね、同じ空間で、同じ空気吸っていたのですから、それは気が気ではなかったことでしょう。
そして、実際に対応したスタッフは、自分も感染しているかもしれないリスクを背負いつつも、献身的かつ丁寧に対応してくれていました。
スタッフのPCR検査
4月3日。濃厚接触者となった担当者のスタッフに保健所から連絡があり、ようやく検査をしてくれることになりました。罹患の疑いのあるお客様のご来店後、数日間のうちにその店舗のスタッフと他の店舗間の交流があり、もしそのスタッフが陽性だったら全店舗に関わる問題となっていました。
同じくその間、相当数のお客様もご来店されています。もし陽性となったら…。この街で第1号の罹患者がうちの会社から出ることになるのです。この街は、蜂の巣をつついたような大変な事態になるでしょう。
私には、結構な修羅場を乗り越えてきた自負があります。しかし、自分のことではなく、地域、社会に対して多大な迷惑をかけることになります。
もし、2次、3次と広がって、持病をお持ちの方やお年寄りに移してしまったら……。最悪なことばかりが頭をよぎります。この2日間は生きた心地がしませんでした。
スタッフのPCR検査結果
奇しくも、この日は妻の誕生日でした。我が家の子供たちが用意してくれた誕生日ケーキのサプライズ。(いい子たちだ……)
私はこの家族を守れるのだろうか……いやいや、こんな日に最悪な知らせなんかあるわけがない、と自分に言い聞かせていました。
検査をした日の深夜、保健所から連絡がありました。結果、うちのスタッフは陰性でした。まずは一安心。ホッと胸をなでおろしたのも束の間、そこからはありとあらゆる噂、風評、ウソ、デマ、誹謗中傷の雨あられが始まっていたのです。
先が見えない未曾有の状況の中、1番申し訳ないなと思うのはお客様に今もご迷惑をおかけしていること。我々にとっても耐えがたい状況です。
それでもお1人お1人に誠実に向き合って対応してくれるスタッフ。みんなの懸命な対処でなんとか持ちこたえていました。まさに、「すべきことをする」みんなの姿がそこにありました。
閉めるべきか 開けるべきか
その時に実は、数件ある他の店舗も営業継続か、それともいっそ自粛するかをとても迷っていました。自粛するならどの店舗をするのか、全店するのか、どれくらいの期間するのか。
逆に、営業継続なら見えないウイルスに対してどう戦うのか。その意志決定する分かれ道は、「感染と風評のリスク」と「リスクを抑えるコスト」とのバランスということになるでしょう。
営業継続もリスク、自粛するのもリスクです。感染者を出すリスクをゼロに抑え、国が用意した休業補償等との差額を会社から持ち出す覚悟があるなら営業自粛となるでしょう。
逆に、たとえお客様やスタッフに感染者が出たとしても、2週間の休業補償と風評は覚悟、という考えなら営業継続となるでしょう。
では、新型コロナウイルスが収まるまでサロンを閉めて、はたしてお客様が待っていてくださるのか。現在、この地域で休業しているところはないので公認浮気となります。それをして帰ってきてくださるのだろうかという不安も。
そもそも、他のサロンに行って罹患したのでは本末転倒の話になります。また、その期間、会社が社員の給料をどこまで保証できるのか。内部留保にも借り入れにも限界があります。
しかし、スタッフにも生活があります。所帯を持ち、家を建てたスタッフもたくさんいる。給料が激減すればスタッフの生活を守れなくなる……。はたまた、「こんな危険な時期にどうして社長は私たちに営業させるんだろう」「外に出たくないよ、怖い…。」そう考えるスタッフもいるのではないかとも考えました。果たしてどうするべきなのか、本当に苦悩です。
今週は続行の決断
私が下した決断は、(今週は)営業続行です。今、毎日のように情勢はめまぐるしく変化しています。幸い、今まで私がやっていた仕事はすべてストップし、することがないので社会の情勢はタイムリーに耳に入ってきます。来月のことは見えなくても、今週のことは少しは見える。
今週を積み重ねてゆけばだんだんに先が見えてくると考えたのです。
この記事を書いている時点で、東京のサロンの状況も伝わってきます。有名店が次々に自粛しています。幸い、地方では感染リスクがそこまで高くない、というのも判断理由の1つです。
しかし、都会の後を追うように状況がさらに悪化した時には、お客様と社員の安全を担保するために即座に営業停止する覚悟です。いずれにしてもこのままの状況は続かないのですから。
非常時営業形態にシフト
サロンを開けるならば、我々は【日本一安全なサロン】を目指そう! と考えました。あの瞬間、日本一危険なサロンだったのですから、大きな変革をしなければなりません。
こんな状況は神様がくれたチャンスだ! と考え、みんなでアイデアを出しながら営業形態を一変させました。まだ誰も見たことがない世界を私たちはすでに見ているのだ、そう考えるようにしました。非常事態なのです。今までの常識を覆し、不可能を可能にして、やり切ろう! とスタッフを喚起しました。
次回、後編では【非常時営業形態】の実際取り組んでいる内容をお話しします。