こんにちは、市役所勤務の訪問美容師 大坪亜紀子です。
前回ご紹介した85歳のお客様、里子さん。里子さんとのストーリーには続きがありました。どこまで鍛えてくれるお客様なのだろう!?
認めます……私が全部悪いです
「私の頭もう1度貸すわ。」
私を試しながら2度目のカットをそう表現して、商売人として認めてくれた里子さん。帰り際には親指を突き出してグーッと言ってくれて、その後はお茶飲みながら楽しくおしゃべりする関係になれた、はずなのに。先日、お部屋にお邪魔したときの出来事。
「やっぱり髪型が気に入らない。」
以前怒られた時の表情だ。えー! グーと言って喜んでいたはずなのに、後ろ姿も見てもらって完璧ねって言ってくれていたはずなのに、何で? 2度目のこのパンチには、さすがの私も動揺です。
「気に入らない理由を教えてください。」と聞くと、「襟足が短すぎる」と。48歳離れた心をつかむのは簡単なことではないようです。ただ、こんなに何度も怒らせて、認知症が進んでいる里子さんもさすがに私を忘れることはないだろう。お店での出来事なら大クレームですよね。
でもこの流れ、このままでは引き下がることはしたくないから、私に怒る理由がなくなるまで根気よく嫌われないように、関係づくりに励みます。
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私がここまでやる理由
10ヶ月ほど前、施設に入所する女性と髪を切る約束をしました。5日後に改めてお邪魔する予定だったのに、その2日後に施設の職員の方から電話があり「亡くなりました。」と衝撃の一言が。
すぐに駆けつけ、結果エンディングカットをしたものの、生きているうちに髪を切ることができなかった経験をしました。
訪問美容の新たな価値を見出す為に現在挑戦中の私ですが、施設の方と話したり、お年寄りの髪を切っていると感じていることがあります。
施設の方の話を聞くといつ何があってもおかしくない覚悟で働いていて、目の前のお年寄りがいつ身体が動かなくなるかもしれない、言葉が発せなくなるかもしれない、亡くなってしまうかもしれない。
また今度ね、もう少し後でね、じゃダメなんですと。髪を担当させてもらって8か月になる100歳の五味さんも、最近は、より腰が曲がった気がする。私は、身内の死に直面した経験は小学生以来ありません。だからこの危機感を自分事として感じたことがありません。でも70代の元気な両親にも、98歳になる自宅で過ごす祖母にも、まだ大丈夫と思っていてはダメなことは気付いています。
美容室に出向くことが難しくなってしまったお年寄りの髪を切る訪問美容は、そういったことも頭に置いておかなくてはなりません。訪問美容師だけではなく、いつかはみんなが向き合っていくことかもしれません。
暗い話をしたいわけじゃなく、そう考えるとスピード感の大切さがわかってきます。予約でいっぱいなんです。その日お休みなんです。人が足りないんです。それはできないんです……は通用しない。でももう1つわかっているのは、このままの私のやり方じゃそのハードな壁にぶち当たる日が来ると思います。
でも今大切にしたいのはハードじゃなく、ソフト。だからソフトをどんどん磨いて、自分だからできる価値を高めて、実践者として成功も失敗も伝えられるように経験を積んでいきます。そしてこの考えに賛同する美容師が増えていったらいいなと思っています。今後もPRATERを通して、情報交換・共有の場として発信をしていきます。コメントもどんどん頂けたら嬉しいです。
あとは、お年寄りスタイルうまくなりたい! 思えば美容師歴15年のなかでご年配のお客様は少なかった、里子さんの言葉で自分の経験不足を痛感しています。
80代オーバーのヘアカタログ作りたいな。
こんにちは、市役所勤務の訪問美容師 大坪亜紀子です。 今回は、今までとは少し違う経験談のお話を。 目次 1 「訪問美容師…